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 それから、1カ月余りが経ったころ、おじさんが車に乗って表れた。  おじさんは私と弟妹を車に乗せると、国境を越え、私たちを隣国のとある施設に連れていった。その施設は孤児を預かり、他国に養子として斡旋する業務を行っていた。 「いいかい、しばらくしたら君たちを養子として迎えてくれる人が現れるから、その人についていくんだよ。」 「大丈夫、良い人だから。きっと君たちを大事にしてくれると思う。」  それから私たちは、おそらく養子として引き取られる国で使われている言語であろう外国語を中心に、毎日色々な勉強をさせられた。勉強はあまり好きではなかったが、毎日の食事と、ふかふかのベッドが保証されている場所での生活は、今までと比べると天国のようだった。  やがて、私たちを養子に迎えてくれる人が現れた。その人は独身男性で、海外でレストランを営むオーナーシェフであった。  それから、私と弟妹は飛行機に乗せられて遠くの国に連れていかれた。  それから私と弟妹の生活は一変した。まるで夢のようだった。  養父をパパと呼ぶようになるまで、それほど時間はかからなかった。パパは、私たちに何不自由ない生活をくれた。教育にも熱心であり、私たちは皆、大学まで進学することが出来た。  学校に通っていなかった期間が長かった私は、なかなか学校での勉強についていけずに苦労したが、パパが家庭教師をつけてくれるなど、熱心にサポートしてくれたことで、人並み以上には勉強が出来るようになった。  やがて大学を出て働きに出た私は、恋人が出来て結婚をした。働きながら2人の子供を産み、幸せな生活を営んでいた。  弟もつい最近結婚し、子供を授かったようだ。  そして今日、妹の結婚式を迎えた。  美しいウェディングドレスに身を包んだ妹の姿を見て、男手1つで私たちを育て上げたパパは感慨深そうであった。
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