とある山奥の研究所

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それからさらにトラップを超えて行けば、頂上に建つ一軒の家にたどり着く。 いや、家と言っていいのか……。 暗い色に少し白をまぜたような、灰色というよりグレーと言ったほうがピッタリくる薄い色の壁、赤い三角屋根、ピカピカに磨かれた窓などは、けっこう見かけることが多い。 しかし山のふもとから見ても屋根が見えるほど高く、前後左右の四隅にそれぞれ一つずつ塔があり、重々しい雰囲気の木製で大きなドアがある家など、そうそうないだろう。 その中を、獣たちがうろついているのだ。 しかし、こちらを見ても襲ってはこない。 毎日お腹いっぱいの食事を食べていてわざわざ人間を襲って食べる必要もないし、善人と悪人の区別くらいつくような目と感覚を持っているので、侵入者や泥棒等以外を襲うこともないのだ。 その動物の中にはライオンやパンダなど外国や動物園から来た動物もいる。 肉食獣の背中にサルがのって騒いでいる光景など、一生見られるものではないだろう。 また、子熊と子猫が仲良くじゃれあっている様子なんて、サーカスでも見られないのではないだろうか。 これが、この山の獣が人を襲わない理由である。 そしてしばらく廊下をすすみ、迷路のような道を歩き、階段を何度も上り下りし、エレベーターにも何回ものり、隠し通路や秘密の抜け穴を通り、そろそろ何階のどのあたりにいるのかすらわからなくなってきたころ、ある一つのドアを見つけることができる。     
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