「とかす」実験

2/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「博士は前に常識にとらわれていてはいい研究にならないと言っていましたが、信用します。たしかに博士は常識にとらわれていません。」 その言葉に、Vは首をひねる。 ノアはさらに言った。 「ふつうの常識をもった人なら、チョコをとかすために冷凍庫にいれたりしません。入れるのは、オーブンです。」 「……………………。」 ちなみにここは異世界でもなければチョコが比較的珍しく誰も溶かし方を知らない世界でもない。 単にVが常識知らずの大馬鹿なだけである。 「それはそうと、どうしてこんな実験をしたんですか?」 「もうすぐバレンタインだろ。」 話題を変えるノアに、Vが即答する。 「君に、助手チョコをあげようと思ってね。とかしたチョコをマシュマロにつけるんだ。おいしいよ。」 「勘違いしているようなので、二つ訂正します。」 感情のないノアの声。 「一つ、バレンタインは女性がチョコを贈る日です。男性のあなたはチョコをもらう側です。」 「……………………。」 「二つ、助手チョコというものはありません。あるとしたら義理チョコです。」 「……………………。」 「わかりましたか?」 そう言ってチョコの包み紙をゴミ箱に捨てかけたノアが、動きをとめた。 その目は、三日前の日付が書いてある消費期限の欄にくぎ付けになっている。 「博士……。」 「どうしたのかな?」 「これを私に食べさせようとしてたんですか?」 「何か問題でもあるのかい?」 「消費期限、知ってますか?」 だまって袋を受け取るV。 消費期限の欄を見て言う。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!