23人が本棚に入れています
本棚に追加
花子さんがツイちゃんを見ると、ツイちゃんは振り返ります。当然、誰も居ません。昭和の残り香のようなボケです。
「お前だ! 化け猫」
「オイラかにゃ?」
「そうだ。お前が手伝ってくれたら、早苗が好きなだけ撫で撫で揉み揉みしてくれるぞ」
ツイちゃんは、花子さんの提案を聞いてハシャギ出します。頭フリフリ、お目目パチパチ、尻尾ユラユラさせて跳び跳ねるのです。
「手伝ってやっても良いにゃ」
話が纏まった三人? は、茜の家へ向かいます。
茜が住む五階の一室へ到着した一行は、チャイムを鳴らしますが応答は無く、玄関には鍵が掛かっていました。
「早苗、玄関の扉をスマホで撮影しろ」
私は、花子さんの指示に従います。
花子さんは、取り込まれた写真へ移動し、ヘアピンを加工してピッキングします。年季の入った小学生? です。いえ、これが妖怪花子の能力なのかも知れません。纏めると、スマホの中で怒鳴り散らし、勝手に留守宅の解錠をする。うん、世界を救えそうな能力なのです。
さて、写真の中のドアが開錠すると、現実のドアからも開錠音が鳴ります。
私は玄関ドアの取っ手を下げ、室内へ侵入します。
室内は静かです。恐る恐る玄関から上がり、廊下を進みます。
いかに友人宅とはいえ、他人の領域に入り込む後ろめたさ以上に、何か重苦しい雰囲気を感じます。疚しい事をしているつもりは無いですが、何故か抜き足差し足忍び足なのです。
廊下の先は、ダイニングキッチンになっています。私が突き当たりのドアを開けると、その先に見た物は、縛られている少女だったのです。
「茜ちゃん!」
茜は、椅子に縄で固定され、口と目には手拭いを巻かれています。モゴモゴと声が出ない所を見ると、口の中に布の様な物を詰め込まれているのかも知れません。これは危険な状況です。
私が茜の縄を解こうとすると、ツイちゃんが異常行動を起こします。化け猫は、テーブルの上に飛び乗ると、背中の毛を逆立て、ある方向を威嚇するのです。爪をビシビシ突き立て、牙を見せます。
フーッ、フーッ ニャギャギャー
かなり興奮しているようで、気が触れた様でした。
最初のコメントを投稿しよう!