トイレにイットイレ

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「早苗、ビックリするなよ」  花子さんの警告の後、それは現れました。  キッチンから続く応接間のドアが開き、異形の物が入って来ます。それは、人の様であり、人では無い物で、皮膚が蒼く、頭部に三本の角を持ち、手には金棒を持っていたのです。  異形の怪物は、服を着ておらず、蒼くて長い体毛が渦を巻いています。顔は轢かれた犬の様で、歪さが際立っています。目の大きさも位置も不揃いで、大きく裂けた口には、乱杭歯が並んでいました。   これは、かなりヤバい生物だと一目で解ります。 「無秩序と混沌のカオスから産まれた鬼、邪鬼だ!」  花子さんの解説が入ります。  怪物は、左右対称の美とは無縁で、手足の長さまで左右で違うのです。だから、動き自体に違和感が有り、そのグロさと言ったら、私が初めて幼稚園で作った粘土細工の様です。それは、周りの園児たちは勿論、先生方まで言葉を失った逸品なのです。これは不安になります。 「これが邪鬼? 倒せるの?」  私が不審に思うのも無理はありません。だって、邪鬼は大きさこそ人間サイズですが、横幅が有り、力も強そうな上、金棒を持っています。  所がこちらは、スマホの中で威張っている小学生と、少し大きめの猫でしかないのです。残念ながら私は、完全に戦力外です。 「『倒せるの?』とか言うけどさ、倒すしかねぇだろ!」  花子さんは私に決意表明をした後、ツイちゃんに指示を出します。 「ツイン、邪鬼の真後ろにトイレがあるから、そっちへぶっ飛ばせ」  一般人の感覚ですが、猫には無理な作業に思えます。
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