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花子さんは、勝利の余韻に酔う暇もなく、再びリアルトイレに駆け込むと、今度はスマホの写真の中のトイレから出て来ました。
私は、花子さんとツイちゃんの見事な連係プレイに感心していたのです。大掛かりなマジックを観た様な感動を覚えます。ファンタジスタ・イリュージョンです。
さて、事件を解決した帰り道、私は歩きスマホをしています。そうしないと花子さんと話せないのです。
「茜ちゃんは、邪鬼に襲われた記憶が残るの?」
私の質問に、花子さんが答えます。
「いや、ダディが後始末のエージェントを送って痕跡も記憶も綺麗にするから、トラウマの心配はない」
何だか凄い展開です。秘密結社のようです。妖怪の存在を隠す組織があるのでしょうか? こうなると、やっぱり宇宙人も実在するような気がしてきました。
「へぇ、なんか、黒いスーツのエージェントが来そうだね」
「まぁ、そんなとこさね」
その後、会話が途切れます。
茜の住む団地から国道沿いに下ると、大きな橋があります。夜空に伸びる街灯が等間隔で並び、とても綺麗でした。
私は、星を見上げて歩いています。天体ショーを見るうち、気持ちがホッコリしていました。つまり、油断していたのです。
その時、後方から自転車が走って来たらしく、急ブレーキの音が耳に飛び込んで来ました。多分、スマホに夢中なボーイでしょう。まぁ、ガールかも知れません。
幸い、スピードはそれほど出ていなかったようで、衝撃は受けますが、よろけて橋の手摺から身を乗り出す程度でした。ですが、手から何かが滑り落ちるのを感じました。
花子さんが驚愕します。
私も驚愕します。
スマホが、自然の法則に従って落下します。キラキラ光る川面へ吸い込まれて行くのです。
「早苗のバカ!
ドジ!
間抜け!
オタンコナスゥゥゥゥゥ」
スマホが小さくなると、花子さんの声もフェードアウトしました。
私は、唖然として固まったまま、水面を見つめていたのです。
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