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実は、自宅療養中だった茜は、私に助けて貰った事をSNSで拡散していたのです。
彼女は、邪鬼やツイちゃんや花子さんに関する記憶は消えていましたが、私が霊障を解決した事だけは覚えていたのです。
茜の影響力は絶大で、何故なら、私とは真逆のタイプの彼女は、小麦色の肌にショートカットの男前女子ですし、その上、ソフトボール部に所属するエースの4番で、バレンタインデーでのチョコ獲得率や、後輩女子からの告白率も運動部の男子に負けないのです。つまり、学生からの関心度も高く噂の拡散も早いのです。
「早苗、おはよう!」
茜は、教室に入って来た私を盛大に出迎えます。
私は、茜が鬼に食べられそうになったトラウマがない事に安心していました。そして、彼女が私の家に寄らずに早めに学校へ来た理由も察しています。既に私の武勇伝を聞き及んだ生徒が、こちらを注目しているからです。
「早苗はもう、あたしより人気者だよ」
茜に事の経緯を説明されましたが、困惑を隠せません。
「校門の所で先生から『美しすぎる霊能力女子』って言われた」
「あたしが広めたからね。ピッタリだろ?」
「美しすぎるは盛り過ぎ!」
私の抗議を、茜は却下します。
「早苗は美人だって、それに命の恩人でしょ。お礼がしたいんだよ」
「お礼?」
「そう、早苗にサッカー部のイケメンを紹介するよ」
茜は、私の腕を引っ張り、廊下へ連れ出します。
廊下には、本当にイケメンが立っていました。茜は、私をサッカー部の少年の方へ押すのです。
「初めまして、二年二組の成沢信吾です」
信吾は背が高く、スポーツマン特有の爽やかさがあるので、悪い気はしません。それに、成沢信吾は将来有望で、ナショナルチームに選ばれるほど有名な選手です。ああ、顔が熱くなります。妖怪に関わっていようと、不幸な過去を抱えていようと、恋する気持ちは健在です。
「深町早苗さん、実は頼みがあるんだ。放課後、ちょっと時間を貰えるかな」
信吾の紳士的な申し出に胸をときめかせます。どうやら交際を申し込まれる訳ではないようですが、最近は妖怪とばかり出会っていたので、たまには素敵な男子と交流するのもいいです。
とはいえ、信吾に恋した訳ではありません。少し憧れてはいます。
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