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私は、自分に霊能力が無い事を知っているので黙ってしまいます。
「勿論、引き受けます。成沢くんのお役に立ちたいの」
私は、自分で言った覚えのない台詞に驚いたのです。そう、喋っているのは私の声を真似た花子さんでした。自分が発しない自分の声を聞くのは、ちょっと恥ずかしいです。それにしても、やはり花子さんは何時までも大人しくしているキャラじゃないようです。
「取り敢えず、お人形は預からせて貰える?」
信吾は、私の顔を凝視していました。かなり驚いています。
「深町さんは、腹話術も得意なんだ! 美しすぎる霊能力腹話術女子高生なんだ!」
「え、えー」
私の感嘆の後、偽物が言葉を続けます。
「そうなの、私ってマルチなのよ。腹話術だって、難しいパ行ができるのよ。
♪パーラーパラッパ、ラッパッパラッパ♪」
「凄い才能だね」
信吾は素敵な笑顔を見せてくれましたが、私は、予想外の展開に口も聞けないほどパニックになります。
「話は変わるけど、謝礼は一万円でいいかな? 茜には、仲介料で三千円を払ったんだけど?」
私が茜の裏稼業に驚いていると、花子さんが勝手に返事をしてしまいます。
「ええ、大丈夫です」
「大丈夫じゃないよぉ」心で叫んでいます。
なんだかんだで、私は人形の入った紙袋を下げ、帰路に着いていました。花子さんを胸ポケットから出し、歩きスマホを続けます。
「もう、成沢くんから一万円もとっちゃったよ!」
口を尖らせて言うのです。でも、花子さんは平気です。彼女が、元は人間だったのか? それとも、元から妖怪だったのか? またはアプリだったのか? それは知りませんが、ちゃっかりしている性格なのでしょう。
「あんたね、お金は邪魔にならないのよ。貰える内に貰いなさい。後で役に立つって」
私は、花子さんの言葉に納得いきません。
「学校で生徒を相手に商売していたら、退学になるかも知れない」
「あんたね、困っている人を助けるんだから、対価を貰うのは自然の理よ」
私は、口では花子さんに勝てない事は身に染みているので、黙ってしまいます。まぁ、腕力でも勝てないかも知れません。スマホの電源を落とすのは、怖くて出来ません。
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