徘徊dollする?

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 さて、私の家は、学校に近い一軒家です。ただ、帰りを待つ人は居ません。父は仕事が忙しく、母は他界しています。  玄関ドアを開け、二階へ上がります。制服を着替え、下に降りて晩御飯を作ります。 「あの人形をどう思う?」  私は、炒飯を食べながら花子さんに質問しました。 「特に妖怪の気配は感じないね。人に害を与える物には思えんな」  画面の中の花子さんは、腕組みをしています。私は、花子さんがスマホに住み着いて以来、歩く時も食事中も授業中も、四六時中スマホを見続けていました。目を離すのは、トイレとお風呂くらいかも知れません。いささか、若年性老眼が心配になります。ブルーライトを九割りカットし、倍率が三倍になり、なおかつお尻で圧迫しても壊れない眼鏡もどきが必要でしょうか?  食事が済むと、もう一皿の炒飯にラップを掛け、「お仕事ご苦労様」の書き置きを添えて冷蔵庫へ仕舞います。  父は帰りが遅いだけでなく、朝も早いのです。私は、顔を合わせたく無いのでは? などと疑っていました。  さて私は、花子さんと共に二階へ上がり、フランス人形と対面します。曰く付きだと知ると、可愛い人形も無気味に見えるから不思議なもので、本当は私にも霊能力があるのでしょうか? それとも、ただの先入観でしょうか? 「兎に角、人形を見張るしかないね」  私は、花子さんの意見に同意しました。 「そうですね。じゃあ、交代で見張ります?」 「いや、あたしが頑張るよ。睡眠の必要がないからね。何か有ったら叩き起こしてやる」 「いやいや、叩けないでしょ?」 「……」  私は、スマホを人形の正面に置き、充電器に繋ぎます。 「花子ちゃんは、自分じゃ動けないでちゅね」  私がからかうと、反撃を食らいます。 「厄介なウイルスになるぞ!」  私は、この脅しに青ざめます。しかし、布団を被って数分後には、おねだりしていました。 「花子ちゃん、何かお話して」 「フラダンスの犬の飼い主は、寝ろ!」  その一言で爆睡したらしいのです。暗示でしょうか? いえ、安心感なのでしょう。花子さんが来るまでは、私は一人ぼっちだったのです。
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