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「早苗、起きろ! 早苗、起きるんじゃ! 何時までも寝てんじゃねぇ!」
私は、花子さんの呼び掛けに気が付き、現へ戻って参りました。そして、応えます。
「花子ちゃん、朝なの?」
「いや、だが人形に変化があった」
私はベッドから起き、明かりを点けます。時計は十一時を回っていました。
「何の変化もないよ」
見た所、フランス人形は最初に置いた状態を維持しています。
「あたしに触ってごらん?」
花子さんの指示通りにすると、それが見えたのです。人形の体に、金色に輝く糸が繋がっています。謎の金糸は上空から降りて来て、次々と人形を捕らえていました。
「早苗、金の糸に触ってみ」
私は、花子さんの命令に難色を示します。得体の知れない物への警戒感が働いていたのです。
「ビリっと来ない?」
私が臆病な態度を示すと、花子さんが怒ります。
「あたしが触れって言ってんだよ!」
私は、花子さんに怖い顔で睨まれ、渋々ながら従います。
「!」
私が金糸に触れた途端、強烈な意思が流れ込んで来るのを感じました。
「あっ!」
私の感嘆を合図にしたように、フランス人形が動き出します。立ち上がり、青い目で私を一瞥すると、跳ぶようにして部屋からの脱出を図ったのです。呆然とする私に、花子さんが言います。
「人形は、あの金糸に操られているんだ。さぁ、追いかけるよ!」
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