徘徊dollする?

7/11
前へ
/129ページ
次へ
「早苗、起きろ! 早苗、起きるんじゃ! 何時までも寝てんじゃねぇ!」  私は、花子さんの呼び掛けに気が付き、(うつつ)へ戻って参りました。そして、応えます。 「花子ちゃん、朝なの?」 「いや、だが人形に変化があった」  私はベッドから起き、明かりを点けます。時計は十一時を回っていました。 「何の変化もないよ」  見た所、フランス人形は最初に置いた状態を維持しています。 「あたしに触ってごらん?」  花子さんの指示通りにすると、それが見えたのです。人形の体に、金色に輝く糸が繋がっています。謎の金糸は上空から降りて来て、次々と人形を捕らえていました。 「早苗、金の糸に触ってみ」  私は、花子さんの命令に難色を示します。得体の知れない物への警戒感が働いていたのです。 「ビリっと来ない?」  私が臆病な態度を示すと、花子さんが怒ります。 「あたしが触れって言ってんだよ!」  私は、花子さんに怖い顔で睨まれ、渋々ながら従います。 「!」  私が金糸に触れた途端、強烈な意思が流れ込んで来るのを感じました。 「あっ!」  私の感嘆を合図にしたように、フランス人形が動き出します。立ち上がり、青い目で私を一瞥すると、跳ぶようにして部屋からの脱出を図ったのです。呆然とする私に、花子さんが言います。 「人形は、あの金糸に操られているんだ。さぁ、追いかけるよ!」
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加