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「ウイルス対策ソフトじゃないの?」
そんな疑問を抱きますが、説明文を読んで安心したのです。
〈ウイルス対策ソフト、花子さんへようこそ。
このソフトは、決して怪しい物ではありません。
むしろ、貴方の生活を快適にします。
これから、ソフトを起動する手順をお伝えします。
まず、アプリを開いて、女子トイレへ行き、奥から三番目の扉を撮影してください。
なお、このアプリを使わないと、スマホどころか、貴方の生活もグッチャグチャになります。
ダディさんより〉
「ダディさんって誰? ウイルス対策にトイレの写真?」
迷っていると、警告文が追加されます。
〈あと三分以内に指示通りにしないと、ウイルス感染により、スマホが重症化します。早めのパ○ロンです。ダディさんより〉
後から思い直せば、時間指定は相手を焦らせ、正常な判断を奪う常套手段ですが、その時はまんまと引っ掛かってしまいました。
「スマホ、換えたばかりなの、壊れたら困る」
私は、ダディさんの術中に嵌まってしまい、手を上げて教師に許可を求めます。
「先生、トイレに行かせてください」
やる気の無い数学教師は、当然のように許可します。私は、教室を後にしてトイレへ移動します。
校舎のトイレは、三階に在ります。高校に入って二年ですが、授業中にトイレへ行くのは初めてなのです。
だけど、仕方がないのです。私は基本的には真面目な生徒ですが、今日は健康だけが取り柄の親友の茜が欠席なので、心配の余りムシャクシャしていたので、不可抗力なのです。
だから、決して数学教師や数学をバカにしている訳では無いのです。コサインやタンジェントなんて、意味が解らなくても響きが気に入っているし、ルート記号なんて夢に出て来た事もあるのです。まぁ、よく考えると悪夢かも知れません。
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