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・No side・
『んっ、あ。』
ちゅくっ。と温室には似合わない水音と共に、甘い声が響き渡る。
ソファの上に押し倒されている黒羽の体は、ピクンピクンと水音に合わせて微かに動くだけだった。
上半身しか脱がされていないのにも関わらず壮大な色気を放っている黒羽に、夏樹は口角が上がっていくのを止められない。
夏樹が施した所有の証は、今や体操服で隠れる部分のほとんどに付けられていた。
『紅は白に映えるとよく言いますが・・・この光景を見るとよく分かりますね。』
華と形容するに相応しい紅い痕は、まるで白い着物に散らされる紅い椿のように黒羽の体を彩っている。
それが酷く夏樹の独占欲を刺激した。
・・・が。
『なん、れ?なんれこんなこと、するん・・・?』
黒羽の言葉によりこの行為を始めた意味を思い出す。
これはあくまで“お仕置き”。
この学園で容易に肌を見せたことと変装を解いた事への、だ。
それなのに夏樹は、いつの間にか自分の思うがままに黒羽の体を貪っていた。
『・・・だから言ったじゃないですか。悪い子には、お仕置きです。って。』
あぁ、自分は悪いやつだ。と夏樹は自嘲的な笑みを零す。
“お仕置き”だと称して黒羽の体を好き勝手弄び、穢すなんて従者としてはあり得ないことだ。
・・・そう、頭では理解しているのに。
胸の内に沸き上がるのは、紛れもなく歓喜だった。
誰も知らない想い人を見ることができ、なおかつそれを引き出したのが自分であることへの。
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