お返しは必要です!

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お返しは必要です!

 いつもの学校の帰り道、近所の神社の前を通る。小さいながらも歴史の古い地元の神社は、お正月やお祭りの時は屋台も並んで賑わいをみせる。けど、今日は人気(ひとけ)もなく静まりかえっている。いつもなら前を素通りするけど、今日は鳥居をくぐり、本殿の前に立った。明日の為に最後の神頼みだ。やることはやった。今更慌てても仕方ないのだから、ゆっくりと参拝してお願いしていこうと思った。  明日、公立高校の入学試験を受ける。ここが、みっちょんと私の運命の分かれ道になるかもしれない。みっちょん、斎木心温(さいきみおん)と私、佐伯心愛(さえきここあ)は幼稚園からの付き合いだ。名前が似ているから?一瞬で仲良くなった私たち。高校も絶対に一緒に行こうね、と誓い合った。モチロン、ずっと一緒なんて無理だって分かっている。でもせめて高校生活は一緒に過ごしたい。  ここで立ちはだかったのが学力の差と、家庭環境の差だ。みっちょんのお(うち)はお医者様がゴロゴロいる家系で、みっちょんも医者になるべく勉強をしている。親が勧めるのは医学部に進学率の高い私学の超難関校だ。  一方、ウチの家は極々普通のサラリーマン家庭。親には絶対に公立高校、と言われている。  みっちょんは公立高校に行きたいと両親に再三掛け合い、西光(さいこう)高校ならとお許しをもらった。ここで問題になるのが私の学力。みっちょんは県内一の偏差値を誇る西光高校でも余裕、だけど私は3ランクアップしての受験になる。  担任にも、塾の先生にも無謀だと散々止められた。だけど、一筋でも希望があるなら私はそこにかける。  用意していたお賽銭、十円玉ひとつと五円玉がひとつ。いつもお賽銭は15円と決めている。誰に教えてもらったか忘れたけど、『(じゅう)分、()縁がありますように』って意味で、まあ一つの語呂合わせだ。「西光高校と充分御縁がありますように」と思いながら賽銭箱に投げ入れた。鈴を鳴らし、柏手を打って、あとは祈るのみ。  明日の入試が上手く行きますように。難しい問題が出ませんように。力を発揮出来ますように。西光高校に合格出来ますように。
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