お返しは必要です!

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***  パンパンと大きく柏手を打って手を合わせる。ありがとう、ありがとう、ありがとうございました。心の中でお礼の言葉を繰り返す。  午前中、みっちょんと一緒に西光高校の合格発表を見に行った。奇跡、誰もが奇跡だと言った。失礼な!ちゃんと努力だってしたんだから!そう、私はなんと西光高校に合格していたのだ。何度も何度も番号を見直した。みっちょんの377番と、私の378番、合格発表の掲示板には二つの番号がちゃんと並んでいた。  涙でぐちょぐちょになりながら、みっちょんと抱き合い喜びあった。来月から二人で西光高校に通える!街中が白く輝いて見える。目の前にはキラキラと輝く未来が広がっている気がする。  二人で散々喜びあった後、一人、地元の神社へとやってきた。神様にお礼を言う為だ。試験当日、神様の力が働いたのかどうかは分からない。けど、力を出し切る事は出来た。最後まで集中が途切れず、何時になくスラスラと問題が解けている感じがした。あの“神様”では当てに出来ないと思い、自分に気合いが入ったのが良かったのかもしれないけど。おっといけない、こんな事を考えていたら、また思考を読まれるかもしれない。  まあとにかく合格したのだから。ありがとう、ありがとう、本当にありがとうございました。 『ねえねぇ、今日はお賽銭は?』 「ひゃぁっ!」  やっぱり、やっぱりあの声が聞こえる!頭の中に直接響いてくるような声。何で?前回と同じように、ぐるっと周りを見回してみたけど、やっぱり誰もいない。 『御礼参りに来たのは感心だけどさ。最近はお祈りするだけして、御礼参りに来ない人も多いし?でも、手ぶらはダメでしょー。』  えっと、でもお祈りした時に515円を... 『あれはね、受け付けの時でしょ?ちゃんと願いが叶ったんだから“お返し”は必要でしょ。ほら、早くだして。』  どうしよう、今月のお小遣いはもうないし、今はお財布すら持ってきていない。 『ふうん、そっかー。じゃあさ、お賽銭じゃなくてもいいけど?食べ物とかさ。お菓子とか、お菓子、とかお菓子でもいいんだけど?』  何か妙にお菓子押し?でもそれなら家に帰れば、お母さんが買い置きしているお菓子があるかもしれない。 「すぐ!すぐに持ってきます!」
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