誕生

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 「名前を考えないと。」  間島が言うと、箱田が答える。  「もう決めてるの。亡くなった私のお祖母ちゃんの名前を貰うの、繭。」  「そう、今泉繭。日本国とのルールがまだ決まっていなくて籍が入れられないから、まだ箱田繭かな?」  今泉が言う。なにせ初のフィラフステ星人と地球人のハーフなのだ。  「で、どうでした?」  今泉が涙を拭きながら、真顔で女医に聞く。  「すぐに鑑定したけれど、DNAは……ほぼ地球人、雛さんそっくりの。いやぁ、ウチの擬態システムって素晴らしいわ。」  女医もフィラフステ星人である。フィラフステ星のDNA解析機にデータを送って、どんなハーフなのかを確認した。もちろんその行為は今泉も箱田も了承している。  「ほぼって言うと?」  間島が女医に聞く。  「この子、見た目は日本人の女の子だけど……擬態システムが使える気がするの。擬態のDNAがあるの。詳しくは大きくならないとわからないけど。これはご両親の了承を取ってだけど、シークレットにしたほうが良いかもしれないわね。」  女医が言う。確かに、これからこの子が育っていく中では一般には公開しない方が良いかもしれない。  「魔法少女か~、血は争えないわね。」  箱田が娘を観ながら笑って言う。  「雛にゃん、魔法少女なの?」  間島がバカにしたような顔をして言う。いや、それを言うなら間島は擬態できる魔法おっさんなのだけれど。  「ママは、魔法少女も出来る声優になりたかっただけですよ。ねぇ~繭ちゃん!」  箱田は間島の顔を観ずに娘に語り掛ける。眠そうだった赤ん坊の顔が、急に笑顔になり、笑いはじめた。地球とフィラフステ星の大きな一歩、そして新たなる物語のはじまりの笑顔だった。 完
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