擬態

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 とは言っても、「蝦山スタジオ」にも影響はあった。まず悲鳴を上げたのは、蝦山スタジオの制作進行であり、今泉成人の先輩にあたる間島時男であった。  「運転免許証の停止は無いよな、ちゃんと教習所に通って、学科試験受かって手にしたのに。車の使えない制作進行なんて、鉛筆の持てない原画屋と同じだぜ。」  「仕方ないでしょう。擬態システムが停止した理由が分からないんですから。運転中に擬態がとけてしまったら……。お坊さんの僧衣でも捕まる国ですよ。」  今泉が返事をする。擬態システムのトラブル原因が不明なため、運転免許が停止されているのだ。作画スタッフに用紙を配り、画を集める制作進行は、公共交通機関か自転車で回るハメになった。  間島は原画集めの帰り途中に今泉のマンションに寄って、同居している箱田雛が淹れる、冷たいアイスコーヒーを待っていたのであった。  今泉と箱田はフィラフステ星人と地球人の初のハーフであるお腹の子について、危害のない研究については積極的に協力している。通院している大型病院にはフィラフステ星人の医師も陣取っていたが、安定期に入院するのは息苦しいため、今泉のマンションにいるのである。  「おかしな話よね、地球の技術じゃ妨害出来ないんでしょ。」  アイスコーヒーをちゃぶ台に置きながら箱田が言う。  「そうなんだよ、体だけでなく服のデータも途切れたからね。」  今泉が言う。  「あれ、まっ裸だったの?ヤバイじゃん。」  箱田がニヤつきながら言う。  「俺たちは裸が正装なのよ、雛にゃん。見えて困るトコないし、所詮タコですし~。」  間島が言う。フィラフステ星人は基本、裸族なのだ。なので擬態システムはやや複雑である。
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