擬態

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 フィラフステ星人の擬態システムはタコに近いDNAを利用して行うが、それは生身の部分だけである。腕だか足だか判らない部分に擬態用ブレスレッドを着け、本人の体形を地球人化したデータをDNAに作用させて擬態する。そして擬態を保持するため、サーバーと常時通信している。  服については別に通信しており、擬態していない時の服は風呂敷のような物に入る。服を着た状態から擬態を解くと、風呂敷を背負ったタコ的なフィラフステ星人になるのだ。服を脱いだ状態から擬態を解くと、服を脱いだ所に風呂敷包みが現れる。服を着た時は風呂敷はポケットに仕舞っておく。ハンカチ替わりにも使えて便利だね。もちろん擬態すれば瞬時に服を着た状態になる。  それにしても、体と服の回線が両方遮断されるコトはありえない。地球人の技術でどうこうは出来ないし、当初は太陽風の影響かと思われたが、擬態システムの運用データにもおかしなデータは残っていなかった。  「他に宇宙人が来てたりしてね、貴方たちと同じように『帰宅後のステマ・まじか』の宇宙放送を観て。先にオリジナル作品を成功されて、やっかんで擬態システム妨害していたりして。」  「やっかんでって?」  今泉が箱田に聞く。今泉には聞いたコトが無い言葉だ。  「あら、平和好きなフィラフステ星人は知らない言葉かしら。やっかむ=ねたむってコトね。羨ましくて悔しいコト。」  「ああ、雛ちゃんが声優オーディションに落ちまくってたトキのアレか。」  箱田の頬がぷくりと膨れる。これは子供の胎教に悪いと間島が話を戻す。  「案外あり得るかもなぁ。今泉、ちょっと長のトコに行かないか?別の宇宙人の妨害って話はフィラフステ星人は誰も考えてないと思うぜ。」  「ですね、擬態システム使っている宇宙人とか調べましょう。」  アイスコーヒーを慌てて飲み干し、間島と今泉は水を媒体とした転送システムで日本海溝遠征基地へと向かった。
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