潜入

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 間島をはじめ、蝦山スタジオの面々は、ここ数年のオリジナル作品の失敗作と言われるものを見直した。  アニメスタジオというものは開業も倒産も多い。プロデューサーか制作進行が不平不満のある作画班を引き抜いて独立するが、コケたり、成功しても質の維持が出来なかったり、親会社の意向で解散したり。知り合いからの下請け、原作アリの元受けの後に、自社オリジナルを作る。それが生き残った印のようなものである。  もちろんそこで失敗作となってしまうと、お金と放送枠を取ってきた映画会社とかTV局、商品化するおもちゃとかゲームの会社、最近有力なスポンサーとなりつつあるパチンコ系の会社などの製作委員会に見捨てられて、大概は下請け会社に逆戻り、最悪倒産となる。  オリジナルは、ほとんどが失敗する。よほど作画とか演出に定評が無いとお客さんにすぐに切られる。昔は3話くらいまで見てくれたお客さんも、シーズン50作を超える現状では1話見てくれるのすら難しい。蝦山スタジオのように初オリジナルを映画で成功する確率なぞ数年に1本の確率であり、40年来のフィラフステ星人の努力の賜物だったのだ。  「ここのクオリティは凄いんだよなぁ。こんな高級なレンダリングするシーンでは無いと思うんだけど。こんなシナリオと演出じゃなきゃ大化けしたのになぁ。」  3DCG班のリーダーであるオレンジ色のタコ的……村中史郎が一緒に休憩室のモニターを覗き込んでいた間島に言う。それは2年ほど前に3DCGの良さで躍進した新進の制作会社、「ポリゴノドン」の作品だった。  「メタモルフォーゼ1818」と言うその作品は、変形しまくるメカ18台が合体するロボットモノだったが、メカも登場人物も多すぎて混乱した。ストーリーもメインキャラを集めた博士が最後に自爆して終わり、「博士だけで良かったじゃん」と不評になった。難解な変形ギミックを持つおもちゃは、18台集めるには高価で売れるハズもなく、パチンコ台にいたっては博士の自爆シーンの大当たり動画が発表されただけで、実機が作られるコトは無かった。
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