潜入

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 「とりあえず、3DCG下請けのお願いと称してポリゴノドンに行っていいですかね。」  新作のコンテを描いていた蝦山スタジオ代表兼任監督の田沼に間島が言う。間島は運転免許証の停止を解いて欲しくて必死なのだ。ポリゴノドンまでは電車で20分程度、数作品だが、蝦山スタジオからも下請けを頼んだコトもあり、間島もポリゴノドンの社長に面識があった。  「いや、私も行こう。長からオレメカン星人とペカルティア星人の擬態キャンセラーが届いたんだ。コンテもちょっと煮詰まってて。」  田沼が机の引き出しから、車のリモコンキーのような機械を取り出して、間島に渡した。擬態システムの管理技術者が作ったもので、2つのボタンでオレメカン星人とペカルティア星人の擬態をキャンセルできるものだ。  「いや~、社長の2話のコンテも……いや、じゃあ2人で行きますか。」  間島が電話でポリゴノドンにアポイントを取った。  ワイシャツに緑色のネクタイを締めた間島と茶色のポロシャツを着た田沼は、電車に揺られてスタジオポリゴノドンの入っているビルに向かった。  「どうも~田沼社長、間島さん。いやあ、びっくりしましたよ。まさかお二人が宇宙人だったとは。」  3DCGの作画スタッフの机が並ぶ奥の打ち合わせブースで、ポリゴノドンの北村社長が言う。田沼と間島が顔を見合わせる。間島は映画公開時のステージに上がっていないのでフィラフステ星人とは確認されていないハズなのだ。  「まあ、そんなものなんですが、これからもお取引願いたいと思いまして。で、実は今準備中の……。」  田沼がそこまで言ったところで間島が鞄の中の資料を探すフリをしながら擬態キャンセラーのボタンを押す。1つめのボタンは反応無し、2つ目を押した時!  「ピキィ!」  妙な叫びをあげて、北村社長とが巾着袋を首……耳からぶら下げた半透明のイカ的な宇宙人に変身した。ポリゴノドンのスタッフたちもである!
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