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ゲートが開き、一斉に走り出す競走馬のように、皆それぞれが我先にとバス停に小走りする。
僕も負けじと行きたかったが、この日はついていなかった。
なんでも無い地面に足がもつれ、バタンと転んだのだ。
「大丈夫ですか?」
見知らぬ男性に心配された僕は、恥ずかしさから顔に熱を感じつつ、
「あ、大丈夫です。」
なんて、何もなかったかのように降るまい、その場をいそいそと立ち去った。
急いでその場を後にしたかったせいか、気づけば本来行くべき筈のバス停とは反対方向へ来てしまい、溜め息をつく。
「はぁー、戻るか」
くるりと反対を向いたその時、なんとも渋い喫茶店が目に入る。
慣れ親しんだ最寄り駅だったが、普段あまり来ることのないその場所。
喫茶店を目にしたことはあったのかもしれないが、はっきりと認識をしたのはこの時だった。
「book?
へぇー、なんか本に関して親しい喫茶店なのかな?」
bookという書かれた店の看板に心惹かれ、何となく入ることにする。
店内はいつの時代のものか分からないムード歌謡が流れ、マスターらしきおじさんは僕に気づき、
「空いてる席、お好きにどうぞ」
と促す。
入ってすぐの二人掛けテーブルに着くと、すぐにマスターがやってきた。
「何にします?」
「あ。えーと、お勧めは?」
「ホットケーキです」
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