読み手作り手

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読み手作り手

僕が生まれて初めて本に触れたのはいつだっただろう。 記憶にあるのは、母が読んでくれた絵本。 それは様々あったが、特に覚えているのはナイフが縮んだり伸びたり、膨らんだりする不思議な絵本。 本当におもしろかった。 その楽しかった思い出のおかげか、本が好きな僕はいつしか小説家になることが将来の夢になった。 ただ、人生そんなに上手く行くわけもなく、気づけばサラリーマンになってもう三年目。 歳は二十六歳になった。 それに、夢といっても小説を書いたのは中学二年の夏に一度きり。 ほとんど遊び半分で書いたファンタジーだけ。 将来の夢などとはほど遠い、本当にただの夢。 それでも、時に頭の中では「こんな物語はおもしろいのでは」などと、小説家気分に浸ることもなくはない。 ガタンガタン ガタンガタン 「次は◯◯駅~、◯◯駅~」 揺れる電車の中、帰宅ラッシュの人混みに息が詰まる。 たかが五駅、十五分の時間が三十分にも一時間にも感じるのは僕だけだろうか。 心臓が張り裂けそうになるのを耐え、やっと降りるべき駅に着く。 ドドドドド 降りた後も、ヌーの群れが大移動するような人々の流れに身を任せ改札に向かう。 改札を抜けると、今度は競馬だ。     
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