第四話『管弦祭』

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「役割分担ってわけですか」 「確かに分担といえば分担でしょうか。御洲堀は宮島に住民がいない頃に始まった行事なので、現在においても宮島町の者は加わらない慣例なのです」 「そー言われれば、ご近所さん、誰も手伝っていませんね」 「明日になれば、管弦船の組み立てが始まりますが、これは島の内外関係なく大工が担当します。どの作業についても言える話ですが、自分にできる事をやれば、それで良いのですよ」  餅は餅屋、というわけである。  ならば、料理も料理人だ。今は自分の役割を果たすべきだろう。  そろそろ、スーパー八重が開店する時刻になる。今夜の客用に仕入れてもらっているアナゴを、受け取りに行かなくてはいけないのだ。 「……よっし! 私も、そろそろお仕事に戻りますね」 「アナゴ、苦手なのでしたね。うまく調理できると良いですね」 「はいっ!」  威勢良く返事をして、勢いそのままに裏の通りの方へと早歩きで向かう。始めは足に合わなかった下駄も、もう履き慣れたものだ。
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