981人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
「あたたかく、満たされるアナゴ飯……それさえ食べられれば、満足できる……」
「……承知しました。頑張ってみます。お部屋と宴会場、どちらにご用意致しましょうか」
「……宴会場」
「それでは、午後七時頃にお持ちしますので、時間になりましたら宴会場へお越しください。腕によりをかけてご用意させて頂きます」
意識して力強い返答をしたが、餓鬼は天井を見上げたままで何も反応を示さない。それ以上の会話を拒まれているような気がして、八犬とアイコンタクトを取り、二人で客室を出た。
「いよいよ、ですね」
八犬が声を落として言う。
「ええ、任せておいてください。きっとアナゴ飯を作ってみせます」
「であれば、良いのですが」
八犬の声量が更に小さくなり、囁くような声になった。外で聞いた蝉の方が、よっぽど強い主張をしている。
「……私がアナゴ飯を作れるかどうか不安ですか?」
「そちらは期待していますよ。……ただ、今回のお客様は、食べる事に関しては特殊です」
その言葉を受け、柊は神妙な顔になって頷いた。
餓鬼の特性については、柊も危惧している。
最初のコメントを投稿しよう!