第四話『管弦祭』

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「樹様は、心ではないか、と言われていましたね」 「心……心を満たす、料理……」  噛みしめるように呟く。  どうやら、自分の目標と餓鬼の満足は重なったようだ。  このお題から、逃げだすわけにはいかない。  具体的な答えは分からないけれども、作ってみせようじゃないか、と思う。  そもそも、今の自分はアナゴ飯を作れるかどうか、からのスタートなのだ。それを乗り越えた後で、餓鬼の満足とやらについて考えればいいだろう。 「とりあえず、ご飯、作ってみますね」 「……お手伝い、しましょうか?」  八犬は、難しい顔をしながらも助力を申し出てくれた。  言葉に躊躇があるのは、自分に気を遣ってくれているからだろう。確かに、八犬の前で何か醜態をさらす可能性はある。申し出はありがたいが、柊としてもアナゴ飯は自分一人で取り組むと決めていた。 「ありがとうございます。でも、一人でやってみますよ!」 「分かりました。離れに控えていますので、何かあれば遠慮なく声を掛けてください」 「了解です!」  ボスの指令に答えるドラマの刑事のように、ハキハキとした声で言う。  だが、彼は現場指揮官。警部補といったところだ。ボスは他にいる。 「……ところで、樹さん、今日は起きているんですかね?」 「起きていますよ。新明座で琵琶の稽古をしていました。夕食の時間まで弾き続けるような事はないでしょうが、一声かけておきます」  先月から眠る時間が長いので、どうにも心配なのだが、今は問題ないらしい。  柊はこっくりと頷いてから、台所へと向かった。
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