第四話『管弦祭』

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 辛い思いが次々と募るが、歯を食いしばって包丁を握り、今度はなんとかアナゴの頭を切り落とす。  そして次は、背に包丁を宛がい……、 「ふぐ……う、ううっ……」  再び、包丁を手放してしまう。  それと同時に、柊は確信してしまった。  ――やっぱり、無理だ。  前向きに取り組む? よくそんな大口が叩けたものだ。いい気になっていた自分が恥ずかしくなる。そんな安っぽい気持ちで悪夢を乗り越えられれば、苦労はしない。 「でも……」  消えてしまいそうな声が、口の中に漏れた。 「夕食は作れませんでした」と諦めるわけにはいかない。餓鬼の希望に応えなきゃ、広島の料理人にはなれないのだ。十二支屋のみんなにだって、向ける顔がない。 「……あるんだよね。まだ、できる事……」  今度は、はっきりとした言葉が出てくる。  だが、包丁が三度握られる事はなかった。
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