第四話『管弦祭』

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「飯の準備、できたのか」  そんな言葉とともに、樹が台所に顔を出したのは、間もなく午後七時になろうかという頃だった。 「あ、樹さん。お体、大丈夫なんですか?」 「どーって事ねえよ。それより、アナゴ飯、作れてるじゃないかよ。俺が味見してやろーか?」  樹は台所のテーブルに置いているアナゴ飯を見つけると、柊の返事も待たずに近づいて匂いを嗅いだ。  タレが焦げる香ばしい香りは、柊にも届いている。温かいご飯に絡めれば、アナゴとご飯のふわりとした食感を、濃厚な味で楽しんでもらえる事だろう。 「あー……味見はまだ、誰にもしてもらっていませんけれど、問題ありません!」 「ほう、随分と自信があるじゃねえか」 「それは、まあ」 「頼もしいな。……餓鬼は、これまで何度も来店しているのに、期待に応えてやれた事がないんだ」  樹がしみじみと語る。餓鬼が常連客であるという話は聞いているが、それにしても随分と思い入れがあるようだった。 「なんだか、大切なお客様っぽいですね……」 「当然、客はみんな大切だよ。……でも、餓鬼は特別だ」  樹はそう言って、一度柊の方を見る。言葉を挟まないのを確かめたようで、すぐに一人で頷いて続きを口にした。
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