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「まず、餓死って死に方は本当に苦しい。飢餓という負の感情から生まれるあやかしは、餓鬼以外にもたくさんいるくらいだしな」
「一つ目入道さんも、そうでしたね」
「おう。……餓鬼の最期は、どんなだったか知ってるか?」
「本人から聞きましたよ。……想像すると、胸が苦しくなります」
「まあ、な。……だから、ずっと期待に応えてやりたかったんだ。今回はお前がいて良かったぜ、本当に良かった……」
「あ……」
呼吸のような声が漏れる。
何故だろうか。一瞬、樹の姿が母とダブって見えた。
客の心を救おうとしている点が、一致しているからだろうか。
もちろん、それもあるだろう。だが、彼もまた『母』だから、ダブってしまうのかもしれない、と柊は思う。
なにせ、彼は神様なのだ。
あやかし達を子供のように大事にしているから、この宿を立ち上げたのだ。
その考えに至ると同時に、用意した料理に不安を覚えてしまう。
約束の時間には遅れても、もう一度用意し直した方が……、
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