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「……ああ、面倒くせえな、お前。そんなにだらしないとは思わなかったぜ」
「だ、だらしない?」
「もう、お前なんかいらねえよ。そもそも広島の料理人だって本気かどうか怪しいもんだ。自分を削る覚悟もねえじゃんかよ。今度こそ、正真正銘クビだ。出てけ。……八犬、こいつどこかに追い払え」
「突然、何を言い出すんですか……!?」
「うるせえ」
「話を聞いてください、樹さん!」
「うるせえっ!」
広島の料理人という目標を否定されたうえ、ハエでも追い払うように手まで振られては、自分に非があってもカチンとくる。
柊は反論を口にしようとしたが、間に八犬が割って入り、なだめるように肩を抑えてきた。
「八犬さん、離してください! まだ話は……」
「一度、落ち着きましょう。ちゃんと私が聞きますので……」
八犬の声は、苦悩に満ちているようで、気勢が削がれてしまう。
そのまま引きはがされ、柊は幾度か振り返りながらも、受付を後にした。
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