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「なんなんですか、あの態度!!」
自分の部屋に戻るや否や、柊は大声を張り上げて足を踏み鳴らした。
離れに向かううちに、樹への怒りが加速度的に高まり、一緒に来てくれた八犬に気を遣えないほどには激しているのである。
心構えが甘かったのは否定できないが、一方的にクビを宣言する樹のやり方だって間違っている。いいだろう。クビだと言うのなら、出て行くだけだ。浅野が勧めてくれたとおり、完全な人間社会に戻った方が、先々の為でもある。今後の身の振り方を一択にしてくれたのだから、その意味では樹に感謝しても良い。
早速、荷物の整理でもしよう……そう思ったところで、背後からの視線に気が付いて振り返る。部屋の入口に立っている八犬が、いつになく真剣な表情で見つめていたのだ。
「ごめんなさい、八犬さん。でも、あんな扱いされちゃ、私……」
「お怒り、ごもっともだと思います。あそこで話を切られては、良い気分はしないでしょう。樹様の態度も考え物です」
「……あ、はあ。それは、確かにそうですが」
空気の抜けたような返事を漏らし、八犬を見つめる。
彼は、何があろうと樹の味方だと思っていたのだが、違うのだろうか。
「私も、樹様と柊さんを剥がすのは、少し心苦しくありました。ですが、ああする他ありませんでした。ご容赦ください」
「八犬さんは、複雑な立場ですからね」
「そういう意味ではなく……」
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