1人が本棚に入れています
本棚に追加
「松坂っつう人からあんた宛にもらったもんがあるんやけど」
「ただいまー」
打ち合わせを終えて、一郎は家のドアを開ける。
「「「おかえりー!!」」」
それと同時に3人の弟達が抱き着いてきた。
「ただいま。いい子にしてたか?」
「うん!」
弟達とのコミュニケーションに興じていると、奥から1人の女性が顔を覗かせる。
「一郎、お帰りなさい」
「ただいま、母さん」
「夜遅くまでお疲れ様。私が働けないばかりにごめんね」
「いいって。家族は支えあうもんだろ?」
鈴木家の人生は波乱万丈そのものであった。
自営業を営んでいた父は事業に失敗。
多額の借金を作ってしまう。
その後家族を守るために東奔西走するが、ストレスが祟ったのか数年前に病死。
母親も父なき後子供達を養うため働くが、体を壊してしまった。
そのため、現在は一郎が役者として稼ぐ収入で借金を返済する生活を送っている。
「でも高校生になって部活に入れないのも」
「大丈夫。こっちの仕事、すげー楽しいから!」
「一郎......」
感極まったように言葉に詰まる母。
一郎の言葉はどこまでも家族思いで、優しいものであった。
「本当にありがとね。お腹すいたでしょ?晩御飯食べましょ?」
「あ、母さん。今日は先に風呂にするよ」
「あらそうなの?」
最初のコメントを投稿しよう!