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ママは、魔女だ。
物心ついた頃から、いつも私を叱ってばかりだった。
パパは優しかった。
お仕事の後に、大学へ行っていて、帰宅が遅かったけれど、私をとても可愛がってくれた。
いつも、お土産に、チョコレートを買ってきてくれた。
私は、パパの帰りが待ち遠しくて、夜になると、玄関でパパの帰りを待っていた。
甘い甘いチョコレートは、とても美味しくて、パパの私を見る目もとても甘くて、私はパパが大好きだった。
私が幼稚園に入る二月前に、パパが、会社の事故で、死んでしまった。
私は、パパが写真だけになった事がよくわからなかったけれど、みんなが泣くから、なんだか私も悲しくなって、わんわん泣いた。
だけど、ママは、泣かなかった。
じっとまっすぐ前を見て、涙の一粒もこぼさなかった。
ママと二人の生活が始った。
相変わらずママは、私を叱ってばかり。
「お片付けしなさい」とか、「早く起きなさい」とか。
それに、なんだか、歯が変になっていた。
鏡で見ると、白い歯の横が、黒くなっていたり、茶色くなっていたり。
そのうち、痛くて、我慢出来なくなって泣いていたら、ママは、白い建物に私を連れて行った。
そこには、白い魔法使いが居た。
椅子に座られて、口の中をのぞかれた。
「痛いこと」
をされる予感がした。
ウィーンという機械の音に、泣き叫んで抵抗したけれど、押さえつけられ・・・・絶叫。
ママに手を引かれて、泣きながら帰った。
「パパがいけないのよ」
ママは、そう言った。
「パパは・・ひっく・・パパは、悪く無いもん」
私は、嗚咽しながら、言い返した。
「いいえ、パパが全部悪いの。パパが・・・・」
「・・ちがうもん」
「・・・・もう、チョコレートは食べさせませんからね」
あの白い魔法使いも、ママも、誰かがやっつけてくれればいいのにと思った。
パパとの思い出が、消えていきそうで、ますます私は悲しくなって泣いた。
夜になっても泣いた。
ママは、何も言わず、遠くを見ていた。
ママなんて、嫌い・・・・・
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