4歳の秋

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ママは、魔女だ。 物心ついた頃から、いつも私を叱ってばかりだった。 パパは優しかった。 お仕事の後に、大学へ行っていて、帰宅が遅かったけれど、私をとても可愛がってくれた。 いつも、お土産に、チョコレートを買ってきてくれた。 私は、パパの帰りが待ち遠しくて、夜になると、玄関でパパの帰りを待っていた。 甘い甘いチョコレートは、とても美味しくて、パパの私を見る目もとても甘くて、私はパパが大好きだった。 私が幼稚園に入る二月前に、パパが、会社の事故で、死んでしまった。 私は、パパが写真だけになった事がよくわからなかったけれど、みんなが泣くから、なんだか私も悲しくなって、わんわん泣いた。 だけど、ママは、泣かなかった。 じっとまっすぐ前を見て、涙の一粒もこぼさなかった。 ママと二人の生活が始った。 相変わらずママは、私を叱ってばかり。 「お片付けしなさい」とか、「早く起きなさい」とか。 それに、なんだか、歯が変になっていた。 鏡で見ると、白い歯の横が、黒くなっていたり、茶色くなっていたり。 そのうち、痛くて、我慢出来なくなって泣いていたら、ママは、白い建物に私を連れて行った。 そこには、白い魔法使いが居た。 椅子に座られて、口の中をのぞかれた。 「痛いこと」 をされる予感がした。 ウィーンという機械の音に、泣き叫んで抵抗したけれど、押さえつけられ・・・・絶叫。 ママに手を引かれて、泣きながら帰った。 「パパがいけないのよ」 ママは、そう言った。 「パパは・・ひっく・・パパは、悪く無いもん」 私は、嗚咽しながら、言い返した。 「いいえ、パパが全部悪いの。パパが・・・・」 「・・ちがうもん」 「・・・・もう、チョコレートは食べさせませんからね」 あの白い魔法使いも、ママも、誰かがやっつけてくれればいいのにと思った。 パパとの思い出が、消えていきそうで、ますます私は悲しくなって泣いた。 夜になっても泣いた。 ママは、何も言わず、遠くを見ていた。 ママなんて、嫌い・・・・・
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