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私が大好きな甘いお菓子を、ママはくれなくなった。
果物や、あまり甘くないゼリーや、コッペパンなど。
そのたび、私は悲しくなって、泣いた。
パパが、本当に居なくなってしまったような気がして泣いた。
でも、どんなに泣いても、ママは、甘いお菓子を買ってくれなかった。
甘いお菓子が食べたい・・・・・・
甘いチョコレートが食べたい・・
パパがチョコレートを持って帰ってきてくれそうな気がして、しばらくは、夜、玄関をのぞきに行ったりしていたけれど、真っ暗な玄関は、冷たくて、寂しくて。
その日のおやつも、しょっぱいおかきだった。
私も、泣くのはやめた。
でも、ママに対しては、甘えたり、自分から話しかけたりはしないままだった。
ママなんて嫌い・・・
二人っきりなのに、その一人が「大嫌い」なのは、とても「寂しい」。
そして、なんだか「痛い」
歯も、まだ痛いけれど、他のところが痛い気がする。
ママは嫌いだけれど、ママの姿を見ないと、どこかが痛い気がしてしまうのだ。
痛いのは嫌い・・・
ママが、夕食の準備を始めた。
一人で玩具で遊んでいた私は、ふと、寂しくなって、ママの姿を確認しに行った。
ママの背中が見えた。
ママが、棚の上のガラス戸を開けて、何か箱を取り出した。
その中から引き出されたものは・・・・・・・
チョコだ!!!
あやうく、声を出してしまいそうで、両手で口を押さえた。
私の大好きな板チョコだ。
ママは、こっそり、あんなところにチョコレートを隠していたんだ。
ママは、それを、箱に戻し、ガラス戸を閉めると、振り返った。
「ちょっと、お買い物に行ってくるわね。」
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