4歳の秋

3/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
私が大好きな甘いお菓子を、ママはくれなくなった。 果物や、あまり甘くないゼリーや、コッペパンなど。 そのたび、私は悲しくなって、泣いた。 パパが、本当に居なくなってしまったような気がして泣いた。 でも、どんなに泣いても、ママは、甘いお菓子を買ってくれなかった。 甘いお菓子が食べたい・・・・・・ 甘いチョコレートが食べたい・・ パパがチョコレートを持って帰ってきてくれそうな気がして、しばらくは、夜、玄関をのぞきに行ったりしていたけれど、真っ暗な玄関は、冷たくて、寂しくて。 その日のおやつも、しょっぱいおかきだった。 私も、泣くのはやめた。 でも、ママに対しては、甘えたり、自分から話しかけたりはしないままだった。 ママなんて嫌い・・・ 二人っきりなのに、その一人が「大嫌い」なのは、とても「寂しい」。 そして、なんだか「痛い」 歯も、まだ痛いけれど、他のところが痛い気がする。 ママは嫌いだけれど、ママの姿を見ないと、どこかが痛い気がしてしまうのだ。 痛いのは嫌い・・・ ママが、夕食の準備を始めた。 一人で玩具で遊んでいた私は、ふと、寂しくなって、ママの姿を確認しに行った。 ママの背中が見えた。 ママが、棚の上のガラス戸を開けて、何か箱を取り出した。 その中から引き出されたものは・・・・・・・ チョコだ!!! あやうく、声を出してしまいそうで、両手で口を押さえた。 私の大好きな板チョコだ。 ママは、こっそり、あんなところにチョコレートを隠していたんだ。 ママは、それを、箱に戻し、ガラス戸を閉めると、振り返った。 「ちょっと、お買い物に行ってくるわね。」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!