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次の瞬間、私は強烈なその味がする固形物を、吐きだした。
口の中がジンジンして、顔から火を噴いてしまいそうになった。
「パパ!!チョコレートじゃないよぉ!!」
パパ!パパ!
と、叫んでいた私の足下が、ぐらりとした。
鈍い衝撃があって、そして、何が起こったのか暫く、わからなかった。
ぐにゅぐにゅする感覚に、下を見ると、私は、上向きに倒れたママの上にいた。
ママは目を閉じていて動かない。
ママ???
白い箱に、白い着物を着て、目を閉じていたパパがフラッシュバックして、私は、ママの体を夢中で揺さぶった。
ママ!
ママ!!
ママのまぶたが動いて、目を開けた。
そして、次の瞬間、私は抱きしめられていた。
「・・・・・・・・・良かった・・・・・・」
そう耳元で、声がして、その後は、低い音が響いてきた。
それが、ママが泣いている声だと、ママの体が小刻みに震えているのだと気付いた私は、つられるように、ぽろぽろ涙をこぼして泣いた。
暫くの間、台所の床で、ママと二人で抱き合って泣いた。
「・・・・ママをひとりぼっちにしないでね」
それから私は大人になり、結婚して、子供が出来て、そのまた子供が出来て・・・・・
ママは、まだ相変わらず、口うるさい。
だけど、カレーを作る度に思い出す。
「ばーば、それ、なぁに?」
3歳になった、孫が、カレールーを指さして尋ねる。
「さて何でしょう」
「チョコレート!!」
「桃子も、食べてみる?」
「いる!!!」
「お母さん!ちょっと!!!!」
娘があわてて、止めに来る。
私は、笑いながら答える。
「貴女も、食べちゃったじゃない。」
「それは・・・」
娘は、その時の強烈な記憶がまだあるのか、気まずい表情をする。
「きっと、遺伝ね・・・・・・・・・・・・・・・・・お父さん」
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