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管理職に対して、大和は素っ頓狂な声を出した。何かの冗談だと1番部長そうなマルを抱える中年男性を見た。
「僕は怪奇課幽霊係の係長の角野です。春市君、よろしくね」
「待ってください。猫が部長なんですか?」
「最初は驚くよね。そうなんだ。とりあえず説明はあとにして顔合わせと言いたいところだけど……」
角野は熊の上で寝てしまった女性を一瞥したあと「今度にしようか。佐賀君は夜勤明けであの状態だし、堺君も今から現場直行だし」と申し訳なさそうに言った。優しそうな係長で大和は安心した。
「顔合わせは警察学校出たあとだね」
大和の身体から血の気が引いた。
「け、警察学校?! あそこに戻らなと行けないんですか?!」
半年間みっちり鍛えられた学校へ再び戻らねばならぬという事実に、配属が決まって一番最悪な気分になる。
「二週間ね! ほら、ここ特殊だから。専科を受けてもらわないといけないんだ。じゃ、行こうか」
優しいと思った角野は「さぁさぁ僕とマルさんも行くから!」と来て数分しか経っていない大和の背中を押した。
「あ、あの! こんなこと言ったらあれなんですが、俺、幽霊見えません!」
「どうして?」
「ここに入る前に霊体の気配を感じて、今も感じているんですけど、見えないんです!」
大和はぐるりと部屋を見渡すが幽霊らしきものは一人もいない。もしかしたら見えなくなったのかもしれないと、心踊らせながら伝えるが……
「幽霊ならたくさんいるじゃん、ほら」
堺と呼ばれた丸眼鏡の青年が自分の足元、マル、そして熊を顎でしゃくった。
「動物の中身、幽霊だから。てか君、霊力強すぎじゃない?この部屋は結界が張られているのに外で霊体を感じたんでしょ?」
気に入らないと言った目付きで丸眼鏡の奥から嫌な眼差しを向けられた大和は、自分の霊力の高さを思い知らせてしまい頬を痙攣させた。
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