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大和はいつの間にか眠っていた。昨日のように、明朝、目が覚める。だが、昨日と違い、今日は部屋がとても寒い。そして空気が重たく感じる。
ゆっくり目を開けると、テーブルの前にぼんやり人影があった。青白く光っている。霊体だろうと、大和は慌てもせず、どこかへ行くまで霞んだ視界のまま過ごす。
霊体は手を忙しなく動かしている。一向にどこかへ行く気配がない。大和は、寝返りをうち、もう一度眠ることにした。
次の瞬間、全身を這うように鳥肌がたった。体が硬直し、目の前は真っ白になる。硬直した体は徐々に力が抜け、今度は綿毛になったかのように軽くなる。真っ白だった視界には風景が広がっていた。
「何だこれ」
声をだしたはずなのに、頭の中で反響する。目の前には森となぜか角野がいた。しかも、ほうれい線がなく、今の優しい面影もない。目を泳がせ何かに怯えている。
「角野さん?」
また声が反響する。角野は大和の声かけに答えない。かと思ったら、目の前が自室の壁になった。体はいつもの感覚を取り戻し、ベッドに横になっている。
しかし、とれたはずの疲労感以上の気怠さに襲われ、大和は再び目を閉じた。
次に目を覚ましたのは、朝の六時半だった。テーブルの上の湯呑は空になっている。
「ゲンさーん、変な夢をみたんだけど」
返事はない。すでに源次郎はいなかった。
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