第一章 特殊警察部 怪奇課 幽霊係

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──どうして俺が? 大和は刑事になりたくてもなかなか推薦してもらえず26歳となった今も交番勤務だった。同期の中には大和の憧れ「刑事」になった者もいて、遅れをとるまいと頑張っていた。たまに同期と飲みに行っては「素質のなさを見抜かれているのか」と吐露していた。励ます者もいれば「確かにお前はたまにのろい」と言う者もいる。後者は刑事になった同期で、大和はそれを言われる度に唇を噛み締めていた。 今夜も久しぶりにその同期達と飲みに行くのに、土産話にもならない最悪な辞令にキャンセルしたくなった。しかし、唯一の楽しみである誘惑に負け、結局約束の居酒屋へと向かってしまう。 「取り調べ長引いちまって」 と、あとから来た刑事になった同期・野田とカチリと目が合った瞬間、やはり「来年度も交番か?」と揶揄われてしまう。 ビールジョッキに口をつけ答えない大和の反応を勝手に「イエス」と捉え、野田は更に揶揄った。 「お前は採用試験の時から抜けてんだよ~」 と、大和を揶揄う鉄板ネタを今日も放り込む。 警察学校時代、採用試験の個人面接の話になったことがある。定型化された試験では聞かれる内容は同じで、質問数も大差変わりない。しかし、大和だけ質問数が多かった話を何気なしにしたら、そこから大和の性格を揶揄う話が生まれてしまった。 「情報が少なすぎるから、面接官に突っ込まれるんだよ」 面接は自己アピールの場。1つの質問にいくつ自分の中の警察官としての素質をアピール出来るかがポイント。多くの質問を食らった大和は面接官に与える情報が少なすぎて困らせたと周りは言った。それに…… 「現場の情報だって後出しが多いしな」 大和は報告をしなかったり、あとから「実は──」と発言することが多かった。迅速な捜査には致命的。これが原因で推薦してもらえないと同期達は言う。 しかし、これには原因があった……
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