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「失礼します! 本日より配属されました春市大和です!」
大きな声で入室した大和は敬礼ポーズをとる。しかし、目の前に広がる光景に口を唖然と開け、敬礼している手が力を失った。
「あーーー、天国うう」
扉から一番近いデスクの床にはツキノワグマが仰向けに寝ており、その腹の上で女性が至福の時間を過ごしている。
その奥では……
「マルさん! 早くしてください!」
中年の男がそう叫ぶと、1匹の猫が壁の隅へ突撃した。何かを追いかけ回し、「取ったにゃー!! 逮捕だにゃー!!」と咆哮し高々とジャンプしたその口には台所によく出る黒いアイツ。
「ありがとうございます! ちょっ、こっちには持ってこないでくださいよ!!」
飼い主に自分の狩りの出来を見てもらおうとマルと呼ばれた三毛猫は中年の男を追いかけている。大和はその光景に「ネコが喋った……」と見開いた目を更に丸くした。猫の狩りを見ている間に熊をベッドにしていた女性は夢の中へ……
他に誰かいないものかと見渡すと、一番奥のデスクに男がいた。そこへ近づくには熊を越え、ゴキブリを咥えた猫から逃げる中年の男を避けなければならない。
仕方がない、と大和は足を踏み出した。デスクやファイルなどの仕事環境は所轄のオフィスと大差ない。ただそこに動物サーカスのような光景が広がっていれば別で、公務員の職場とは思えない緊張感のなさだ。
ようやく奥のデスクまでたどり着き、もう一度敬礼をして「お仕事中失礼します!」と声をかけた。
大和の声にようやく反応し、顔を上げた男は丸い淵の眼鏡をかけていて文学が似合いそうな大人しい顔つき。鼻の頭にはそばかすがあり、他の職員と同じく足元には動物──犬がいた。
「本日より配属されました春市大和です!」
メガネの奥で目を細めた男は「ぶちょー」と気だるそうに声を発した。
「えっ? 何、どうしたの堺君……おや君は?」
大和が振り向くと、そこには三毛猫マルを抱えたゴキブリ嫌いの中年男性がいた。この人が部長かと、大和は顔を引きしめもう一度挨拶をする。すると、最初に口を開いたのは猫のマルだった。
「おお、君が春市かにゃ。俺が特殊警察部部長のマルだにゃ」
「へ?」
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