◇◆◇◆◇◆◇◆◇

1/8
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

       病院のベッドから窓の外を見る。 「今日は雨だ……」 8階の白い壁に囲まれた自分に見えるのは、空。太陽が憎らしいことも青空から目を背けることも、とうに過去になった思い。 『家に帰ってもいいんだよ』 『真っ白な壁じゃ詰まらないでしょう』 『音楽とか、DVDプレーヤーとか……』  どれにも『放っておいてくれ!』としか答えなかった。 (だから? だからどうなるって言うんだ?) ただ八つ当たりをしたかった。  ぶつかって来た小さな女の子。その真横を突っ走った自転車からその子を守ろうとした時、横断歩道に傘が飛んだ。 (傘が……事故になる!)  ちょうど青信号になった横断歩道を走った。右折してきた車の運転手の目が、広がったまま転がる傘を追いかける。減速はしたけれど走ってきた少年には気がつかなかった。弾き飛ばされた体は、大きく跳んで縁石に首から叩きつけられた。  全てがあっという間だった。信号が青から赤になるまでの出来事。   女の子がぶつからなかったら。   自転車があんなスピードで来なかったら。   傘が飛ばなかったら。   車の運転手が前を見ていたら。   雨じゃなかったら。   風が吹かなかったら。    
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!