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「いい加減、まとめてLEDに替えましょうよ」
「まだ使えるのに勿体ないですよ」
まったく若い人はなんて言いながら、兵働は古い電球を片付ける。
「着替えてきますので、少し待っていてください」
「着替え?」
「黒服に隣を歩かれたいですか?」
この格好で、と黒の三つ揃いを指差す。確かにそれは度胸がいる。
車寄せの前で柊二を待ちながら、改めて屋敷を仰いだ。
――私には分不相応なお屋敷だわ。
自分が〝分〝だなんて言いだしたことにいらついたが、正直な思いだ。
ほかに住むところがないとはいえ、こんなところにいていいのだろうか。
と、高く澄んだエンジン音とともに一台の車が滑り込んできた。
「お待たせしました」
降りてきた柊二は、チャコールグレイの三つ揃いにネイビーのソリッドタイを結んでいた。黒の三つ揃いよりは会社員に見えなくもなかった。問題は用意された車だった。
ラピスブルーに輝くボディの流線も艶かしい、国産のスポーツセダン。
――叔父様は、こんな派手な車に乗ってるの?
驚きが顔に出たのか、柊二が肩を竦めた。
「気に入らないのでしたら、諒様の車を持ってきますよ。久しぶりに自分の車に乗ろうと思ったんですけどね」
「い、いえ、……派手で驚いただけです」
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