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「お言葉に甘えさせていただければ、幸いです」
「ああ、良かった! ねえ、柊二?」
「そうですね」
柊二は控えめに笑んで、ちらと沙璃を見た。
「実はもう客室を設えてあるのですよ。そうだ、皆を紹介しなくては」
柊二が壁の真鍮のボタンを押して、しばらく。応接間に兵働と森下、そして先の青年が戻ってきた。壁沿いに並んだ彼らを諒はひとりひとり目で示した。
最初は、背が高く肉付きの良い六十代の女。
「彼女は兵働といって、私の乳母のようなひとです。いまも家のことを任せています。その隣が森下。兵働の手伝いを」
示されたのは、着替えを手伝ってくれた博多人形のような女性。
ふたりは膝を折る形式の礼をした。
「柊二は知っていますね、彼は私の従僕というか秘書というか執事というか……、とにかくなにもかも丸投げしています。何かあったら彼に」
柊二が軽く頭を下げ、その隣、中背で頬の豊かな青年が背筋を伸ばす。まだ高校生かと思うほどに若く、可愛らしい顔をしていた。
「彼は隼斗。みなの手伝いと庭の手入れをしています」
隼斗は思いのほか綺麗なお辞儀をし、安堵の表情で顔を上げた。
男性の使用人は名前で、女性の使用人は苗字で呼ぶのが諒のやり方らしい。
最後に、諒は皆に沙璃を示した。
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