235人が本棚に入れています
本棚に追加
ひとりになると、温かかったのも嬉しかったのもすべて消えていくようだった。なにもかも潮が引くように失われて、胸にはまたあの空っぽだけが残る。暗くて深くて冷たい空洞が自らの呼気さえ凍えさせ、喉がひりひりと痛んだ。
広いベッドはふんわりと躯を受けとめた。
久しぶりに感じる布団のやわらかさ、温かさ。手足が喜んで、自分が野良犬にでもなった気がした。枕元のサシェからカモミールの優しい香りが漂う。誘われるように涙があふれて止まらなくなった。枕に顔を埋め、沙璃は声を殺して泣いた。
**
最初のコメントを投稿しよう!