雨雪

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 久しぶりに発する朝の挨拶。  やわらかな笑みがかえってきた。 「おはようございます、沙璃さん」  朝の光の下で見ると、この食堂はずいぶん様相を変えた。あらわな梁型といい高い木パネルといい、昨晩は英国伝統様式の重厚さばかりを感じたが、大きな窓から陽光が射せば紅色の壁も明るく食欲を誘うものに見える。窓の上方、葡萄の蔓と実をモチーフにしたステンドグラスも実に優美だ。  食事の手順は昨晩と同じだった。六人がけのテーブルにつくのは諒と沙璃だけ。森下がカートで食事を運び、隼斗が給仕する。昨晩、柊二は一皿目を諒に運んだあとは傍らで酌をしていたが、流石に朝はワインの世話もないようでただ後ろに控えている。 「卵はどのようにお召し上がりになりますか?」  気取った様子で椅子を引きながら、隼斗が尋ねる。 「どのように、と申しますと……?」  困惑気味に問い返した沙璃を見て、隼斗は大袈裟に目を瞬かせた。諒が微笑む。 「今朝は僕と同じものを召しあがりませんか?」  頷き、慌てて、「はい」と声を足す。なにも知らないことが恥ずかしくなった。     
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