雨雪

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 得意げに口角をあげた。しばらくふたりとも無言で食べる。柊二はのんびり箸を動かしているよう見えるが、不思議と沙璃と食べるペースは変わらない。 「……辞めた後、結局どこも話がまとまらなくてさ。職も金もねえと私生活もぐっちゃぐちゃんなって、自棄んなってたころに拾われたんだ。最初は運転手みたいな感じで」  柊二は食べる手を止め、伏目がちに笑った。広い肩が震える。 「……あんときは、諒が神様みたいに見えた」  ――私と同じだ。 『諒』と呼んだのに耳は引っかかったが、それよりも強い想いがわきあがる。  ――同じだ。ぜんぶ失くしたと思ったときに叔父様と会って、救いの手をさしのべられて――。  柊二は少し照れたように話題を変えた。 「それより、そっちも意外だったな。クレーン免許だって? 彫刻やってるなんてどんなお嬢様かと思えば」 「まさか! ほかはともかく彫刻はガテン系よ? つなぎに安全靴に軍手、頭にはタオルで、手にはチェーンソーやハンマーなんですからね。見て、この手」  箸をおき、右手を開いて見せた。手は大きく指は長いが、すらりとした印象はない。手の甲や指に薄く筋肉のついた、しっかりした手だ。 「強そうな手だな」 「ありがと、褒め言葉よ」 「ああ、褒め言葉だ」  そう答える柊二も、しっかりとした大きな手をしていた。     
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