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柊二となんとなく間が合うのは、互いに作り手だからだと沙璃は思った。ファインアートと工業製品。作るものこそ違うが、手で作りあげるのは変わらない。
食事を終えて、ようやく駅前に荷物を取りにいく。
インターネットカフェに忘れたぶんは諦めることにした。化粧品を買いなおすのは痛いが、あの店は男とグルだ。沙璃のことを待ち構えているかもしれなかった。
コインロッカーから重たいボストンバッグを引きずりだす。そして、奥、骨壷の入った桐箱をそっと抜いた。火葬場を出たときは、ずいぶん小さくなってしまったとよそよそしさばかりを感じた箱だが、こうして一日ぶりに手にすると不思議とほっとした。
肩にかけていたボストンバッグを柊二はひょいと抱えあげた。
あ、と手を伸ばしたが、持つよ、と軽くかわされる。
「これだけ?」
「うん。あとは、大家さんが処分してくれるって。持っていくところもないし」
柊二は眉を寄せた。
「だめだ。……家、どっちだっけ?」
「だめって、だって……。あっ、ごめん、そうよね、大家さんに迷惑よね」
なんでこう自分勝手なのだろう。恥ずかしさに顔が熱くなる。
「そっちじゃない!」
いらだった声で言って、柊二は沙璃を見下ろした。
「あんた、ホントにそれだけで良いのか。捨てたくないもんだってあるだろう」
「……うん」
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