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「なんなんだい、あんたね、まさか悪いところから借金でも……」
その場はうまく柊二が誤魔化して急ぎ足で大家宅を辞した。
「だいじょうぶか? 真っ青だぞ」
「だって、家にまで来られるなんて……」
身震いしながら、インターネットカフェで絡まれたのだと明かした。利用時に提出した身分証明書から住所を知ったに違いないとも。柊二は怪訝に目を細めた。
「……あんた、なにしたんだ?」
「別に、なんにも」
反撃したからだ。傷を残したからだ。だから、報復しようとしている。
だが、柊二たちは沙璃は恐喝されて逃げただけだと思っている。
「わ、私が被害届を出すって思ったんじゃないかしら。だから口止めしようとして……」
「出したほうがいいんじゃないか?」
家にまで押しかけてきた。その事実が柊二の眉を顰めさせる。
「ことを大きくするほうが怖いわ。それに面倒は嫌よ」
「……ま、引越したしな。あんな山奥にいるとは思わねえだろうし」
ぽん、と頭に手を乗せられて、軽く掻きまわされる。
やっぱり大きな手だ。
そう思ってしまってから、沙璃は軽く柊二を睨んだ。
「だんだん子ども扱いしてくるわね?」
「そうされたそうだったから?」
少し意地悪く笑って、またぽんとひとつ。
「……私、はたち過ぎてるんだけど」
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