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白がかった緑の諫早石でできたメジロはただ二匹睦まじく寄り添っているだけで、仕草のなにがつがいというわけでもないのだけれど。
諒は腰を折って、ひとつひとつゆっくりと鳥たちを眺める。少しくすぐったい。
「ねえ、これ、このメジロたち、玄関に飾ってはだめですか?」
「えっ、それは。あ、あんなところに置いていただくようなものではありません」
「飾りたいのです。あのホールは殺風景でいけない。……だめ?」
作品を気に入ってもらえたら嬉しいに決まっている。そのうえこんな甘さのある声で強請られて逆らえるわけがなかった。
「……光栄です」
ようやく笑みを浮かべたように見えた。すみません、お借りしますね、と傍らの桐箱に向かって断り、そっと石でできたメジロを取りあげる。小鳥を両手に包むと、小さな男の子が立っているように見えた。
――こんなに背が高くて、こんなに年上の男の人なのに。
「叔父様、その指……」
メジロを抱えた手指、その左右どちらにも朱い線が無数にある。
「恥ずかしいから見ないでください。僕は本当に不器用なんです」
薔薇の棘だ。包みもせずにあれだけの薔薇を持てば当然か。けれども、花束を受けとった沙璃は棘なんてちくりとも感じなかった。薔薇に棘なんてなかった。
彼自身が手折り、棘を外したということだ。
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