01 ぼくはねこ。

5/7
前へ
/40ページ
次へ
 暫くするとヒトの子は、石を投げるのを辞めた。  飽きたのだろう。  僕は、痛みに耐えながらお寺の下に隠れ傷を舐める。  舐める度に激痛が走る。  目の前を、優雅そうな猫が横切った。  猫は僕を横目にこう言った。 「ダッサーイ」  猫は首輪をつけていた。  飼い猫だ。  その首輪を見たら無性にママに会いたくなった。  だけど僕はノラねこ。  ネコの子だけど僕はノラだ。  あ、そっか。  僕はノラ、つまり捨てられたんだ。  僕は、涙をこらえて傷をなめた。  泣いたって何も変わらないのだから……  だから、僕は鳴く。  泣けないのなら僕は鳴く。  ただ、ただ、ただ、ひたすらに……
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加