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俺は身を屈め、少し下にある枝へそっと右足を下ろした。
足先に触れた葉が、数枚ほど地上に向けてひらひらと落ちていく。
「じゃ、俺はそろそろ行くよ。お互い、遅刻なんてしたら大変――」
みし、と足元で嫌な音がした。
俺は思わず動きを止め、足元へ恐る恐る目を落とす。
嫌な予感は、的中していた。
右足を乗せた枝が、ぱきぱきと乾いた音を鳴らしている。
血の気が引いていくのを感じて、俺は慌てて右足を持ち上げた。
――けど、時すでに遅し。
「うわあぁ!?」
右足を支えていた枝が真っ二つになり、支えを失った俺は抵抗空しく地上へと落下した。
視界が回転し、背中と後頭部が勢いよく地面へと打ち付けられる。
目の前で火花が弾け、少し遅れて鈍い痛みがじわじわと打ち付けた箇所に広がっていった。
「だ、大丈夫!?」
仰向けに倒れた俺の視界に、女の子の顔が飛び込んでくる。俺は引きつった笑顔を浮かべながら、ふらふらと上体を起こした。
「だ、大丈、夫……」
そう言ってすぐに俺の視界はぼやけ、再び芝生の上へと倒れ込んだ。
「お兄ちゃあぁぁん!?」
女の子の叫びを最後に、俺の意識はぷつりと途切れた。
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