第一章  君がいない街

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 多分、俺は高校一年生のときから有沙が好きだったんだと思う。自分では意識したことがなかったけれど、きっとそうなのだろう。  だから、誰とつきあってもうまくいかなかった。ほぼ毎回の居留守に、そのときつきあっていた女の子たちがどれだけ傷ついたものか。いま思うと、ひどいことをした。ごめんね、最初から有沙とつきあっていればよかったんだ。  俺が高熱を出したとき、有沙が看病してくれた。でもこれからは、高熱を出しても有沙はそばにいない。俺たちがつきあうきっかけになった俺の高熱も、いまじゃ懐かしい思い出だ。 「なあカズキ、有沙ちゃんと最後にヤッタのって、いつ?」  同じようにゴロゴロしていたナオトが俺に訊く。十八の男の会話なんてこんなもんだ。 「いつだっていいだろ」 「教えろよ、ケチケチすんなって」 「おまえ、暇持てあましてる暇があったら練習とかしたら?」 「午前中、ずっとしてたよ。一緒にレッスンしてたじゃん。カズキさあ、暇持てあましてる暇とか、日本語変じゃね?」 「おまえの頭ん中より変じゃねえ」
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