第一章  君がいない街

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「有沙ちゃんってさあ、めんこいよね」 「めんこい」 「心配だねカズキ。置いて来ちゃってるから。心配でしょ?」 「おまえ、同じこと何度も訊かないでくれる? それより、三時になったら起こして。バイト行くから」 「スマホ、セットしなよ。俺も昼寝するわ」 「あ、そ」  俺もナオトも、上京してすぐアルバイトをはじめた。事務所に所属したとはいえ、食べていけるわけもなく、生活費を稼ぐためにアルバイトは必須だ。  俺は駅前の蕎麦屋で、ナオトはコンビニでそれぞれ働き出した。ヨシアキはイタリアンレストラン、コータはラーメン屋、シンタロウはレンタルショップ。  みんなそれぞれ、バンド以外で働いている。正直、いつになったらデビュー出来るのか不安になるけれど、ナオトの言った通り、いまは前に進むしかないのだろう。
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